検 診

早期発見の重要性と乳癌検診における
マンモグラフィ・超音波検査の有用性
現在、乳癌診療においても質の高さ求められているが、
そのために重要なことのひとつとして生存率向上があり、
それに最も貢献することが早期発見である。
早期乳癌の定義は、腫瘤経が2cm未満で転移のないものであるが、
この時期に発見し適切な治療を施すことができれば、
日本人の乳癌においては術後10年生存率が約90%である。
また、早期発見により乳房温存治療が可能となる。
早期乳癌発見のための診断方法の中心となるものが、
視触診とマンモグラフィ・超音波検査である。
早期発見のために視触診では限界があるといわれるが、
異常乳頭分泌だけを所見とする非浸潤癌もあり、
おろそかにしてはいけないと考える。マンモグラフィは、
特に触知不能乳癌(特に石灰化を伴うタイプ)、
つまり早期乳癌の発見に極めて有用な検査法である。
超音波検査は、特に閉経前女性で乳腺が充実しており
マンモグラフィでは診断困難な症例では最も有用な検査法である
(ただし乳腺用の超音波診断装置を用いた場合)。
欧米では、乳癌の早期発見におけるマンモグラフィの有用性が特に強調されるが、
欧米人に比べて乳房の小さい日本人においては、撮影条件の問題より必ずしも
マンモグラフィだけが有用であるとは言えず、超音波検査法の有用性、
視触診の大切さも説かれるべきであると考えられる。
しかし、現状の超音波検査法では客観性に欠けることが一番の問題点である。
現在、超音波検診におけるコンピュータ支援システムも考案され始めており、
近い将来乳癌検診における超音波検査法の有用性も明らかになると思われる。

乳がん検診の現状    
我が国における乳癌検診は、1987年の第2次老人保健事業により、
全国で35歳以上の女性を対象として問診と視触診による方法で施行されるようになった。
しかし1998年、この検診法の有用性が認められないとの評価により、適正化が図られた。
その結果マンモグラフィ導入の必要性が示され、さらなる検討により厚生省は2000年4月、
準備が整った自治体より乳癌検診へマンモグラフィを導入するよう推奨し、
現在に至っている。
しかし乳癌検診の内容は各自治体に任されているため自治体毎に検診方法は異なり、
すでにMMGを併用し安定しているところ、とりあえず併用開始したところ、
超音波併用検診を始めたところ、まだ視触診のみのところと様々で、
まだまだ改善の必要がある。

乳癌検診の今後の在り方  
以上のことを省みて日本における乳癌検診の今後の理想的な在り方を考えるならば、
基本的には視触診とマンモグラフィ(50歳以上)または超音波(49歳以下)を
1〜2年に1回、施行することが望ましいと思われる。
できれば精度管理上はMMGおよび超音波検査は集団で行う方が良いと思うが、
柏市乳癌検診委員会における経験から考えると、集団検診では受けたがらない婦人も多く 、
個別検診(視触診、超音波検査)の方法も残しておく必要性があると思われる。
また、乳癌検診は検査を行うことだけが目的ではなく、乳癌の早期発見が最終目的で
あることを考えるならば、一般女性に対する乳腺疾患についての教育と啓蒙が極めて
重要なことであり、乳癌自己検診の普及は必要不可欠である。



 

 
Copyright(C)1999 Nagase Breast Clinic